研修医レベル対象の腹部初期診療コース

医学部高学年から研修医3年目程度が,腹痛診療を行うに当たって上級医/専門医に引き継ぐまでに適切な対応を習得することを学習目標とする.

Sunday, March 26, 2006

腹痛のアルゴリズム(AMLS)情報ブログ

今回は、憩室炎について

左下腹部痛が欧米では高頻度(本邦での部位別頻度を見つけねば)で、70%なのだそうだ。入院数日前より症状が持続しているのが他の疾患との違いであり、発症24時間以内の入院は、ほんの17%でしかなかった。半数以上に一度以上の同様な症助の既往がある。他に、嘔気、嘔吐が20-62%に、便秘が半数に、下痢が25-35%に、尿路症状が10-15%に見られるが、食欲不振はそんなに見られない。これは虫垂炎との違い。

欧米では右側憩室炎は、ほんの1.5%でしか起こらないようだが、本邦含めアジア諸国ではもっと一般的であり、小生もよく経験する。75%にも達する。 そのため、虫垂炎との鑑別が最重要となる(虫垂炎との鑑別はまたいづれ)。

身体所見では、限局する圧痛、2割で腫瘤が触れ、腹部膨隆が典型的。限局しない場合は、穿孔、腹膜炎を考えておく。

微熱と、軽度白血球上昇が一般的だが、なくても除外しきれない。45%で白血球数が正常であったという報告もあるからだ。肝機能異常、アミラーゼ軽度上昇、無菌白血球尿はあってもよい。

画像検査をどうするか悩みどころではある。
X線:腸閉塞、腸穿孔などの除外が主な目的
CT: 感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率それぞれ97, 100, 100, 98%であり、標準的検査である。
ただし、10%では、大腸癌と鑑別困難なため、一度は、注腸か、TCFをしておく必要がある。小生は、下剤がかけられそうなら、食出し前に、TCFを行っておくか、外来で注腸を行っている。経験はないが、穿孔、瘻孔形成の除外もできる。
注腸:穿孔、瘻孔部位を特定させるためには、ガストログラフィンで造影。
超音波:皮下脂肪が厚くなければ、超音波で診断可能。感度85-98%、特異度80-98%。CTが利用不可能な場合を想定して、超音波での訓練もしておくとよい。

さて、憩室炎と診断がつき、穿孔や、瘻孔はできていなさそうな場合の治療はどうするか

入院か外来か:小生は、基本的に全例入院としています(どうしても帰宅したい場合は、穿孔の話をして抗生剤出して、増悪時は再受診してもらう)。

欧米の教科書では、下記因子で入院を考慮するとされている。
臨床症状(発熱、腹痛)の重症感、有意な白血球増多
経口摂取が可能かどうか
合併症があるか(高齢、免疫能)
サポートシステムが利用可能か、次のことがあった場合は、すぐ受診してもらう(発熱、腹痛、水分も取れない)

入院、帰宅が決まったところで、抗生剤をどうするか:
起炎菌を特定するのは困難(敗血症あれば血培から生えることはあるが)
グラム陰性桿菌狙い(特に、E. coli、B. fragilis)

ということで、欧米での推奨は、
【外来】
シプロ+メトロニダゾール
オーグメンチン、ST合剤+メトロニダゾール

本邦では、メトロニダゾールが保険適応ないので、オーグメンチンになってしまうが、オーグメンチンに憩室炎の適応があるかも怪しかったりする。治療期間は7-10日間。

【入院】
嫌気性菌:ダラシンもしくはメトロニダゾール
グラム陰性桿菌:3rd cepheもしくはキノロン
短期間のアミノグリコシド併用で、シナジー狙い(やったことないが)。

単剤でカバーするとすると、
ユナシン、タゾシン、チカルシリン(チカルシリンは本邦にはない)

2nd-cephemの中で嫌気性菌カバーの良いセファマイシンなどは、グラム陰性桿菌には若干弱い。

ファイザーさんから、資金援助は得ていないが、入院だと、ユナシンが最適ではないか。ただし、ユナシンには、憩室炎の保険適用はなさそうなのであるが。